■ピアノ聴き比べ企画 第1弾 J.S.バッハ《ゴルトベルク変奏曲》より〈アリア〉
ピアノ演奏史に偉大な足跡を残し、今なおファンを魅了し続ける孤高の天才グレン・グールド(1932~1982)。バッハ《ゴルトベルク変奏曲》で鮮烈なデビュー(1955年盤/Steinway使用)を飾ったグールドは最晩年にも異なる解釈で録音しています(1981年盤/Yamaha使用)。
この曲は緩やかな〈アリア〉に始まり、30の変奏曲を弾いた後、再びダ・カーポの〈アリア〉でフィナーレ。A‐B‐A形式で構成されています。
はたしてグールドは愛奏した《ゴルトベルク変奏曲》に自らの演奏活動の軌跡を重ねたのでしょうか。偶然か、意図的なものか、終始2度のゴルトベルク録音は大いに興味をそそられるところです。
聴き比べ企画第1弾は、その《ゴルトベルク変奏曲》より〈アリア〉を約1分間。人気メーカーのピアノで自ら演奏したものを音楽用PCMレコーダーを使って録音しました。“自演自作”ですのであしからず。
もっとピアノの“音色の違い”を楽しもう!と、YouTubeを利用した
お手製のピアノメーカー聴き比べクイズを皆様にご用意しました♪
関心もたれた方は、右にUPしたサンプル4種を試聴してみて下さい。
先入観をもたないように、各メーカーの名前は伏せています。
それぞれの“音の個性”を感じとることが出来るでしょうか?
(再生ボタンをクリックすればアリアが流れ始めます)
今回ピックアップしたメーカーは以下の4社。
右の音源とは順不同でご紹介します。
①スタインウェイ (Steinway&Sons A-188)
②ベーゼンドルファー (Bosendorfer Model 185)
③ベヒシュタイン (Bechstein M/P192)
④ファツィオリ (Fazioli F183)
いずれも170~190cmのファミリーサイズのグランドピアノです。
1000万円クラスの楽器を豪華に4台並べてみました。
ピアノ入門者は、ブランドではなく“好みの音”を選んでみましょう。
ピアノ愛好家は、どのメーカーの音か耳を澄まして予想して下さい。
ピアノを扱うプロを自認される方なら、全問正解して当たり前?!
答えを知りたい方は、各画面の上下に表示されている文字
“Goldberg Variation”か“YouTube”をクリックすれば分かりますよ。
どうぞゲーム感覚で“利きピアノ”にチャレンジして下さい!
他メーカーの音も聴き比べたい!という方はこちら
→〈アリア〉録音をYouTubeで配信中
ヤマハ (YAMAHA S4) カワイ (KAWAI SK-3)
ボストン (BOSTON GP178) ペトロフ (PETROF PⅣ)
ディアパソン (DIAPASON DR-300)
■ピアノ選びの新しいご提案 ~〈アリア〉にメッセージを込めて~
ガッツリ演奏してしまうと聴き手は曲の方に気を取られるうえ、案外どんなピアノでも良く聴こえてしまうもの。
技巧を凝らした派手な演奏ではなくゆったりしたテンポでダンパーペダル(右ペダル)を使用しない演奏の方が、ピアノメーカー特有の音色・響きの違いをじっくり聴き比べるのに相応しいと判断しました。
録音するにあたっては、レコーダーのマイク位置、録音レベル等、どのピアノも同様にセットしています。
打鍵したときにピアノ内部で発生するノイズ(金属音やダンパーフェルトの擦れる音など)もそのままに収録。
音については一切修正していないので、より弾き手に近い雰囲気で各ピアノの個性を感じて貰えるはずです。
ピアノを納品した後のユーザーの反応も様々ですが、私なりの印象を申し上げますと、
音を基準にピアノを選ばれた方は、とても大切に管理されてメンテナンスにも気を配っている印象があります。
逆に、あまり品定めしないでブランドイメージや価格、外観だけで選んでしまった方ほど、後になってから
クレームが発生したり、アフターケアも“なおざり”のときが…。これも楽器に対する意識の違いでしょうか。
まず音選びに始まり、タッチ、楽器の造り、メンテナンス等を熟慮の上、最終判断は再び音に帰結。
《ゴルトベルク変奏曲》さながらの展開ですが、そんな音楽的なピアノ選びを私は推します。
興味あるメーカーがあれば、ぜひ実際の音を、響きを体感するためにショールームへ足を運んでみて下さい!
やはりピアノは楽器ですから、購入者には音が何より大切な選考基準であって欲しいと願っています。
☆いつの間にやら海外サイトでも話題に・・・
アクセスが急増したため何事かと調べてみたら、アメリカのピアノ専門サイトで議論ネタになっていました。 ※クイズのネタバレ注意!
海外のピアノ愛好家による意見交換の場で取り上げて頂けるとは、作成した甲斐があったというもの。とても光栄ですね(^^ゞ
確かに、書き込みにもある通り、録音ではなく生の音に接しなければピアノの真価は分かりませんし、録音だけで判断されても困ります。
例えば、ここで私が紹介しているベーゼンドルファーは、何台か展示されていた同ブランドの製品に比して、どちらかと言えば“柔らかい音質”で“弾き応えのある重いタッチ”が印象に残るピアノでした。
こうした楽器固有の雰囲気、音響の臨場感などは、やはり直接ショールームで弾いて聴いてみた当人でなければ知りえない情報です。
しかし、お住まいや時間の都合上、あるいは私には恐れ多いから・・・と、気軽には試弾できないような方も各地にいらっしゃいます。
そんな人達のために各ピアノの音色の片鱗だけでも感じて欲しい!と思い立ったのが、この企画のそもそもの発端です。
“そのメーカーが製造した数あるピアノの一例”というご認識のもと、サンプル音源をお楽しみ頂けたら幸いです。