ベヒシュタイン Bechstein

◆ベヒシュタイン動画  Bechstein×YouTube 

明るくピュアな音色を追求しているメーカー。独ベルリンにて製造。
スタがフレーム、ベーゼンがケースなら、べヒは響板の鳴りで勝負。不必要な共鳴を抑える構造と高張力から生まれる純度の高い音は、研ぎ澄ました日本刀のよう。和音でもそれぞれの音が浮き立ちます。ドビュッシーもその特有の透明感を愛したと言われていますね。

大ホールでのコンチェルトにも対応できるよう2000年から高音域のフレーム設計を変更。高い音のボリュームがアップした反面、往年のファンからは「スタインウェイみたい」「個性が失われた」との指摘も。音色か音響か、伝統あるブランドならではの難しい選択といえます。

2013.3.7
CD紹介でも取り上げているジルベルシュタインの弾く〈熱情〉。
激情が迸る最終楽章を情熱的な演奏で聴かせてくれます。
キラキラした音質ながら音色がスタインウェイとは違いますね。
鋭さと潤いが同居した瑞々しい音で聴く〈熱情〉、悪くないかも。  
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■ベートーヴェン:ピアノソナタ第2番・〈熱情〉 (リーリャ・ジルベルシュタイン)

Lilya Zilberstein (1966~ )
第7回ロシア・ピアノ・コンクール優勝、ブゾーニ国際コンクール優勝。男勝りのスケール感と繊細な表現力を兼ね備えています。モスクワ生まれ。ロシア・ピアニズムを受け継ぐ演奏家の中でもトップクラス。

《CASTLE CONCERT SERIES》シリーズ、2008年ライヴ前半の録音。メリハリあるタッチ、強弱・緩急の巧みなコントロールは流石。〈熱情〉も終始ガッチリと堅牢に構築、その見事な出来に脱帽です。

C.BECHTEIN・D280・No.194643使用。カキーンと硬めに仕上げられた輝かしい音が演奏を支えています。一音一音がくっきりとした輪郭で響くので曲の構造を浮き彫りにしてくれるような好録音です。
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<2008>K&K   

■シューベルト:ピアノソナタ第21番D960 他 (シプリアン・カツァリス)

Cyprien Katsaris (1951~ )
仏マルセイユ出身。ポリフォニックな歌心をもった技巧派ピアニスト。1972年のエリザベート・コンクールでは聴衆の圧倒的支持を集めるも9位。1974年シフラ国際コンクール優勝。ハンバーグが好物だとか。

シューベルトが死の直前に書いたソナタですが運命と対峙する勇気と生命力が伝わってくるカツァリスの演奏です。併録のベートーヴェン・ピアノソナタ第12番と同様、彼のテクニックが炸裂する曲ではないものの、軽快な指さばきと内声部が節々で強調されています。

水が滴るような潤いあるピュアな音色。20年前の録音とはいえ新品のベヒシュタインをイメージするには格好の一枚。ピアノと楽曲が“生と死”のコントラストを演出しているような奥の深い組み合わせ。
興味ある方はこちらをクリック!※2011年に復刻!

<1986>TELDEC           

ベヒシュタイン×シューベルト         Bechstein×Schubert

○ピアノ・ソナタ第21番D960
Yorck Kronenberg(ヨルク・クローネンベルク)
/2005/sony

ベートーヴェン・ピアノソナタ第32番等、後期ソナタをピックアップしたCD。
Philippe Cassard(フィリップ・カッサール)/2001/Ambroisie
ピアノソナタ第13番・第21番。記載はないがべヒシュタインらしい透き通るような明るい音色。
○即興曲D899
Franz Vorraber(フランツ・フォーラバー)/2007/K&K
4つの即興曲Op.90、さすらい人幻想曲Op.15のライヴ録音。モデルD280No.191784使用。音硬め。

■ショパン:エチュード集 Op.10&Op.25(エディト・ピヒト=アクセンフェルト )

Edith Picht-Axenfeld (1914~2001)
チェンバロ奏者としても活躍したドイツ出身の女流ピアニスト。1937年ショパン・コンクール第6位。ルドルフ・ゼルキンに師事。

練習曲でありながらも叙情豊かな演奏、悪戯にテクニックを誇示するのではなく遅めのテンポで音楽的表現を重んじている感があります。10-6、25-19など退屈な演奏になりがちなゆったりした曲の歌い回しが抜群。超絶技巧に飽きた方には新たな発見があるかも。

繊細で研ぎ澄ました音。派手さはありませんが、演奏と同じく「渋さ」が際立つピアノです。少しほの暗い印象。フレーム等の共鳴を抑制して、響板による純粋な響きを抽出する設計が録音から伝わります。
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<2007>RCA/TOWER RECORDS   

■リスト:メフィストワルツ第1番 S.514  他 (ホルヘ・ボレット)

Jorge Bolet  (1914~1990)
キューバ・ハバナ出身。ゴドフスキ、ローゼンタール、ホフマンといった名演奏家にも教えを受けた「最後のヴィルトゥオーゾ」。手を平たくして鍵盤に顔を埋めるように前傾で弾く変わった奏法のピアニスト。

技巧を凝らしたリストの曲を彼が弾くと詩的でロマンチックな雰囲気に誘われます。連打や跳躍など技巧が求められる〈メフィストワルツ〉をはじめ各曲ともキレよりもコク、優美な演奏スタイルを貫いています。

リスト作品集は主にロンドン・キングズウェイホールで収録、モデルEW280が使用されています。贅肉を削ぎ落としたようなスリムな音、やや年数を経た感じの乾いた響き。キラキラと緊張を伴った高音域の質感から弦の張力の高さとアグラフ方式の効果が窺い知れます。
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<1999>Philips 音源はDecca                 「20世紀の偉大なるピアニストたち」より               

■ブラームス:8つの小品 Op.76 他 (リーリャ・ジルベルシュタイン)

Lilya Zilberstein (1966~ )
前述したリサイタル後半の録音です。ブラームスの中でも演奏頻度が比較的少ない曲ばかり、玄人好みのプログラムかもしれません。
〈8つの小品〉では第2番の奇想曲(カプリッチョ)が馴染みある作品。併録には〈自作主題による変奏曲〉と〈ハンガリーの歌による変奏曲〉、後者の方がテーマが明快で聴く人には親しみやすい印象です。

大ホールでも響き渡るように2000年からスタインウェイと同じ「カポダストロ方式(高音域の弦を鉄骨フレームで直接抑える構造)」を採用したモデルD。以前のアグラフ方式よりも高音が響きを増しています。

ブラームスには明るい音色の楽器は合わない!との声もありますが、それが趣向の問題に過ぎないことを彼女の演奏が証明してくれます。アンコールのOp.117-1の間奏曲(インテルメッツォ)は絶品。
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<2008>K&K      

ベヒシュタイン×ブラームス               Bechstein×Blahms

David Theodor Schmidt(デビッド・セオドール・シュミット)/2008/Sony
ブラームスOp.118、シューベルト即興曲D946、メンデルスゾーンの作品を収録。

■ドビュッシー:前奏曲集第1巻・第2巻 他 (アラン・プラネス)

Alain Planes (1948~ )
フランス・リヨン出身。パリ音楽院でラヴェルの弟子だったファヴリエに師事。かつては現代音楽のスペシャリストで結成されるアンサンブル・アンテルコンタンポランにも所属、通好みの詩情豊かな演奏家。

1997年から2007年にかけて録音したドビュッシー・ピアノソロ曲を全集5枚組として2009年BOX発売。〈亜麻色の髪の乙女〉を含む前奏曲集第1巻&第2巻を1897年製べヒシュタインで演奏。また《子供の領分》《映像》等を収録したCDでは1904年製ブリュートナー使用。残る3枚はスタインウェイで録音、とピアノ聴き比べも可能なお買い得セット。

侘び寂びを感じる純粋な音に時を経た温かい木の響き。ドビュッシー本人が絶賛したとされるベヒシュタイン、製造当時はもっと瑞々しい音だったのでは。新品の100年後を占う意味でも一聴の価値あり!
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〈2009〉harmonia mundi

ドビュッシー×ベヒシュタイン            Debussy×Bechstein

■ラフマニノフ:ピアノソナタ第1番 他 (エフゲニ・ザラフィアンツ)

Evgeny Zarafiants (1959~ )
1993年のポゴレリチ国際コンクール第2位入賞を契機に国際的な活動を開始。度々来日し“禅”に関心を示すほどの親日家。かつて吉祥寺のレコード店で見かけたことあり。ロシア・ノヴォシビルスク出身。

聴く機会の少ないラフマニノフのピアノソナタ第1番、幼少時に父親が弾いてくれた曲をラフマニノフがアレンジした<W.R.のポルカ>ほか、マイナーな作品にスポットを当てたCD。スクリャービンの録音が好評でしたがラフマニノフでも濃厚な演奏を聴かせてくれます。

モデルMを弾いている写真がジャケに掲載されています。実際に録音で使用したかは不明。音色を聴く限りでは清澄なベヒシュタインのサウンドに違いないかと…。何度か聴いたリサイタルではスタ、ときにベーゼンを演奏、最近ではファツィオリを好んで弾いています。

<2000>ALM RECORDS

■ベートーヴェン:ピアノソナタ第32番 Op.111

Wilhelm Backhaus (Bechstein) 1960年録音
Claudio Arrau (Steinway)
1963年録音
Paul Badura-Skoda (Bosendorfer) 1987年録音
いずれもスイス・ルガーノにて収録。

演奏も楽器も三者三様の企画モノ。比較対象はベートーヴェン後期ピアノソナタの中でも知名度が高い第32番opus111。Jazz的な要素を含む第2楽章の変奏曲はベートーヴェンの到達点とも言える作品。

あまり録音状態が芳しくないのが残念。ただし耳を澄ませてみれば、
響板だけを鳴り響かせるベヒシュタイン、フレームの金属的な響きも音に取り込むスタインウェイ、そしてケース全体の木材を振動させるベーゼンドルファー、各々の特長を聴き分けられます。
<1960,1963,1987>ERMITAGE

■ベートーヴェン