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ピアノのタッチが変?簡単セルフチェックを伝授!

■プロローグ 巨匠アルフレッド・ブレンデルの問題提起

調律師の頼りなさと無関心は、多くの場合ピアニストの
無知に原因がある。

ピアニストは、ピアノのどんなところが良くないのか
はっきり感じとって、言葉に出すことができない。

多くのピアニストは、コンサート・グランドからどの程度の
ものを期待できるかということさえ理解していない。

まるでピアノ会社がその無知を利用して、時おり驚くほどの
欠陥が最初からあるものや、「歯並びの悪い」鍵をもった
楽器を発売しているような気がする


こういう視点から見ると、「悪いピアノというものはない。
ただ悪いピアニストがいるだけだ」という説は、
ピアノ技術が衰えかけていることから注意をそらせようと
するピアノ販売者のモットーのように思われる。


A.ブレンデル著/岡崎昭子訳『楽想のひととき』(音楽の友社)

■演奏技術が未熟? それともピアノのせい?

あなたの弾いているそのピアノ、“楽器”として快適に機能していますか?

長らく調律仕事をしておりますと、極端に狂ったタッチのピアノとも知らずに、必死に練習されているお客様に
遭遇することがあります。
調整が不十分なピアノで無理なトレーニングを続けると、指先の繊細なコントロールが身につかないどころか、
大切な手を傷めてしまう危険性も…。

イメージしたように上手く弾けないなぁ…と感じたとき、ご自身の演奏テクニックの問題ではなく、
もしかするとピアノのコンディションの方に原因があるのかもしれません。

といっても、ユーザーの皆さんにとって、ピアノは外観どおり“ブラックボックス”ではないでしょうか。
いつも使用しているピアノが果たして正常であるかどうか、きちんと把握されていない方が多いのでは?
そう気になりまして、誰でもピアノを自己診断できるページを作りました。

調律師さんやピアノ店のHPを拝見すると、ピアノの調整方法については丁寧に解説しているのですが、
どのようなときにその作業が必要なのか、ユーザー目線での説明は意外にも少ないように思います。

ここでは調律師ではなく弾き手の立場で、素人の方でもわかるようにチェック方法をご紹介します。
ご自身のピアノを点検して、どうかワンランク上のユーザーを目指して下さい!

温度や湿度の影響を受けて、一度きちんと調整されたピアノも時が経つにつれて状態が変化します。
おかしい箇所を発見したとき、調律師に「○○を調整して下さい」と自分から相談してみてはいかがでしょう。

■鍵盤の動きチェック

使い込みのない新品ピアノ、そして湿気をおびたピアノは、木やクロスが膨張してスムーズに鍵盤が動かなくなることがあります。
また古いピアノでは、鍵盤と接している金属ピンに汚れや錆が発生して摩擦が大きくなっている可能性があります。

まずは上下の動きからチェックです。
鍵盤を少し持ち上げてみて下さい。おそらく1mmは上がります。
黒鍵はつまんで持ち上げても大丈夫ですよ。
このとき正常ならば手を放しても鍵盤がスーと元の状態に戻ります。
上がったまま降りてこないのは摩擦で動きが鈍っている証拠です。

次は左右の遊びのチェックです。
鍵盤を沈めた状態で左右にゆすってみて下さい。指に僅かながらコツコツと感触がある程度の遊びが良しとされています。
左右にゆすっても余裕がないときは、鍵盤の抵抗感が増し、指についてこないような、もったりしたタッチになります。ひどくなると弾いたら鍵盤が下がったまま、なんて状態に…。基本的な調整ですから気になるときは調律師に頼みましょう。湿気対策もお忘れなく。
逆にカタカタと遊びが多過ぎる鍵盤は締まりのないタッチ感に。
使い込まれたピアノに見られる症状で修理が必要な目安となります。
中古ピアノを購入される方は要チェックの項目ですね。

※補足(右の画像参照)
鍵盤を弾いたエネルギーは「てこの原理」でアクションに伝わります。
このとき鍵盤の「支点」「力点」では金属製のピンとクロスが触れ合います。この接点での摩擦を最小限に抑えるため、調律師は金属ピンの汚れを除去して滑らかな状態に調整する必要があります。

※最近では特殊な潤滑剤(油ではありません)をこの金属ピンに塗る処置が流行しています。すっきりしたタッチになりますしグリッサンドを弾いても指の痛さが軽減するのでプロのピアニストにも好評ですよ。興味ある方は調律師に問い合わせてみてください。

こんなときの一言。
「鍵盤整調をしてください」

上下の動きをチェック                                                            
左右の遊びをチェック
グランドピアノの鍵盤を外した様子。金属ピンを清潔にします。鍵盤裏側の赤い箇所がフロントブッシングクロスと呼ばれるもの。これが湿気で膨らむと摩擦でタッチが重くなります・・・。

■ダンパー掛かりのチェック

ダンパーという装置をご存知でしょうか?弦を叩いて音を鳴らすのがハンマー、その弦の振動を押さえて止音するのがダンパーの役割なのですが、実はピアノの弾き心地にも密接に関わっています
※最高音から20鍵位低い音までにはダンパーはないので注意。
高音は弦長が短いため音の減衰が早いという理由からです。

はじめにダンパーの存在を確認してみましょう。
ひとつ鍵盤を押さえて音を鳴らして下さい。底から少しずつ鍵盤を元の高さまで戻していくと途中で音が消えるポイントがあります。そこがダンパーと弦が接触する位置ですので良く覚えていて下さい。

では次に通常の状態から鍵盤を慎重に押し下げてみましょう。先程のポイント付近で指先に抵抗を感じませんか?この引っかかる感触こそダンパーの重量が鍵盤に加わる位置、ダンパーの掛かりです

この「掛かり」のタイミングですが、ピアノによって多少の差はあるものの鍵盤の深さに対しておよそ半分まで変更が可能です。各鍵盤を確認して直ぐに抵抗感がある場合は調整で弾き心地が軽くなります。重くしたいときは掛かりを早めて弾き応えを増すことも出来ます。
弾き心地が気になる方は是非ダンパーもチェックしてみましょう!

こんなときの一言。
「ダンパーの掛かりを調整してください」

※ダンパーの掛かりをリセットする際、調律師は右ペダルの効きを揃える緻密な作業も併せて必要となります。依頼されるときは念のため作業時間と料金について事前に調律師に訊いてみましょう。

弦の上にある黒い物体が音を止めるダンパー       弦の下にある白い物体が音を鳴らすハンマー
ダンパーの掛かりが半分の状態。         左隣は底に達した鍵盤。
調律師はハンマーの頂点から弦までの距離を判断して調整します。メーカーによっては工場でハンマーの側面に目安の印をつける場合も。

■鍵盤の重さ(ウェイト)チェック  ※ぜひ一度お試しを

ユーザーの皆様は鍵盤が沈むときの重さ(ダウンウェイト)が何gに設定されているかご存知でしょうか?
たとえばスタインウェイDモデルは47g~52gで各鍵盤が沈むように工場で調整されています。ベーゼンドルファー・インペリアルモデルは52g~55gが基準のようです。メーカーや機種によって多少差がありますが、現在の傾向からすると50gあたりが目安と言えそうです。

我々調律師は鍵盤ウェイトを計測する際に分銅を用いますが、一般のご家庭でも手軽に検査できる代用品は何かないだろうか・・・。
あれこれ悩んだ末に思い浮かんだのが10円硬貨です。お馴染みの10円玉、実は1枚あたり4.5gで製造されているって知ってました?今回このコインを利用したチェック方法をご紹介します!

ここで50gを基準と考えるならば、10円玉を鍵盤の上に10枚(45g)積んで沈むようなら軽めのタッチ12枚(54g)で微動だにしなければ重めのタッチと判断を下せます。もちろん11枚(49.5g)で沈み始めたらノーマルに近い状態になります。これならば鍵盤が軽いのか、はたまた重いのか、誰でも容易に確認できますよね?

調べるときの注意点は、第一に右ペダルを踏むこと
ダンパー掛かりの負荷を鍵盤から取り除く必要があります。
硬貨を置く位置も大切です。白鍵は先端より1センチほど内に、黒鍵は先端に、各鍵盤を同じポジションで計って下さい。おもりを置いて、そろ~と沈み始めるタイミングがその鍵盤のダウンウェイトです。

またもうひとつ忘れてならないのがアップウェイト(鍵盤の戻り)
鍵盤が20gのおもりを乗せても底から戻らない状態では、いくらダウンウェイトが良好でもトリルや連打が弾きづらいタッチになります。
鍵盤に10円硬貨4枚(18g)を乗せて、押し下げた位置から鍵盤が上がってくるか確かめましょう。このときも右ペダルを踏んで下さいね。

温度湿度の影響でタッチも刻々と変化します。個々の鍵盤ウェイトに多少の差があることは目をつぶって下さい。
全体的にタッチが軽すぎる、重すぎる、もしくはウェイトのバラツキが余りに極端である場合は、調律師に相談して修正してもらいましょう。
異常な弾き心地に下手に慣れてしまうと、正常なタッチのピアノを演奏するのに順応が難しくなる恐れがあります・・・。

普段使っているピアノのタッチは軽いのか、重いのか、普通なのか。ピアノユーザーは知っておいて決して損はないと思います。
120円とやる気さえあれば簡単なセルフチェックですので、弾き心地に問題を感じる方は一度このコイン・テストを試してみて下さい!

技術的補足(右画面参照)
・高さが120cmを超える大概のアップライトピアノはキャプスタンとワイヤーによって鍵盤ウェイトを変更できる仕組みになっています。

・グランドピアノはキャプスタンの位置が固定されているため、鍵盤やアクションを徹底的に調整してもウェイトの問題が解消されないとき、最後の手段として鉛調整の出番となります。

こんなときの一言。
アップライトピアノの場合
「キャプスタンの位置を調整してください」
グランドピアノの場合
「鍵盤の鉛調整をしてください」

ただし!
鍵盤の重さに影響を及ぼす要素は種々様々です。
最初に紹介した“鍵盤の動き”も然り。湿気等でアクションの動きが鈍いためにウェイトが重くなる場合もあります。
今回取り上げた調整方法は効果的な手段ですが、必ずしもそのピアノにとって一番相応しい選択とは限りません。
まずは調律師にピアノの状態を診断してもらいましょう!

※テストにより鍵盤に傷がついても補償しかねますのでご注意を・・・。
ダウンウェイトを計るときには10円硬貨をテープ等で10枚重ねたものを用意すると傷防止プラス作業が楽になります。その45gのおもりで沈まなければ上に1枚ずつ積み足して段階的に重くしてみましょう。
アップウェイトも同様に4枚重ねたおもりを準備すれば硬貨がバラける煩わしさがなくなって作業がはかどります!

左はテープで10円硬貨を10枚重ねたおもりに1枚加えたもの(49.5g)。黒鍵には同様に4枚重ねたおもり(18g)。右は50gに設定した分銅。おもりを置く位置の参考にして下さい。
アップウェイトのテスト。沈めた鍵盤に18gのおもりを乗せて指を離したときに自力で戻ってくるかチェック。必ず右ペダルを踏むこと!
アップライトピアノ内部。鍵盤の奥には円筒状の木製部品(キャプスタン)と金属製ワイヤーが備わっています。これを奥に倒すと重いタッチ、手前に傾けると軽いタッチに変更可能。てこの働きの作用点をどこに置くかがポイントになります。
グランドピアノの鍵盤鉛を削る作業風景です。アクションや鍵盤をしっかり調整してもウェイトが異常な場合の最終手段。鍵盤に埋め込まれている鉛を1鍵ずつ入れたり抜いたり削ったり…。最初から弾きやすい楽器を選びましょう!

■鍵盤の高さチェック

さて、次は鍵盤の高さです。
当たり前ですが均一に揃っていること弾きやすいピアノの条件。
技術者は専用の定規を当てながら高さを確認しますが、実は一般の方でも一目で白鍵の凹凸を見破る方法があるのです!
といっても極めて単純、かがんだ体勢で鍵盤レベルに目線を合わせて右上の画像のようなアングルで眺めるだけ。簡単ですよね(笑)

白鍵の高さに段差があるときは境界線の太さにバラツキが生じます。逆にきれいに揃っていたら境界線は均一に。右の場合は中音付近にほんの僅かながら高い鍵盤が…。お分かりになりますか?

黒鍵の高さは各メーカーとも白鍵から12~13mmに設計しています。
このチェックばかりは定規が必要となりますが、黒鍵は白鍵のように並列していないので、多少の誤差なら気にならない方が大半?!

こうした鍵盤の凹凸を直すために、調律師は鍵盤下に色々な厚さのパンチングペーパー(ドーナツ状の紙)を出し入れして調整します。
薄いペーパーは0.03mmから。これまた根気が要る作業です(^^;
鍵盤を乗せるクッションや土台となる木材(鍵盤筬)が温湿度の影響で膨張・収縮すれば、当然ながら鍵盤の高さも徐々に崩れてきます。
あまりに凹凸している鍵盤は調律師に一度お願いしてみましょう!

こんなときの一言。
「鍵盤の高さ(鍵盤ならし)を調整してください」

高音から低音を見渡すアングル。白い境界線が均一なら良し。低音側からも確認しましょう。
白鍵上面から12~13mmが基準。もちろん数値を決めたら同じ高さで揃えなければなりません。
鍵盤下の掃除ついでに高さも調整。僅かな紙の厚みで鍵盤のレベルが大きく変わります。

■鍵盤の深さチェック 

鍵盤の高さが揃っていたら、鍵盤の深さになります。
「鍵盤を押し下げて底に沈むまでの量」ですね。
浅めの設定だと小回りが利くタッチのように感じますが、音の力強さが損なわれます。逆に深めの場合は、音にパワーをもたらす一方、弾き応えも増すので、中には重い硬いと思ってしまう人もいます。
鍵盤ごとに極端な深さのムラがあれば、当然演奏も難しくなります。

この鍵盤の深さの基準寸法は、各メーカー共通してほぼ10mm
ピアノの状態やお客様の好みによって深さを加減することもありますが、大切なポイントは「一律に揃っていること」です。

深さの確認は、専用定規(あがき定規)を白鍵に押し当てながら行うのですが、一般ユーザーでも出来るチェックをご紹介。“底ざらい”とも呼ばれ、調律師が深さの均一性を最終確認する方法です。

まず白鍵を4つ(または3つ)各指の力が均等になるよう意識しながら底まで押し下げます。(このときギューと押しつけ過ぎないこと!)
そしてもう片方の手の指で白鍵の上面を横になぞってみて下さい。
深さが不揃いであれば鍵盤の境で指先に凸凹を感じるはずです。

慣れるまでは指によって力の差が生まれるので、ひとつ隣の鍵盤にずらして別の指に替えて再確認してみると良いですよ。

黒鍵の深さについては、沈めた状態で2mmほど頭が見えていれば(高さ12mm-深さ10mm)、ここではOKとしましょう。
(実際には調律師は別の方法で深さを確認して調整しています)

今回ご紹介した“底ざらい”は、隣り合った白鍵の凸凹を探す方法。
例えば、すべて11ミリの深さで均一であったり、低音にいくに連れて少しずつ深くなっていたり…、そうした状態を見抜くためには、やはり専用定規が必要であり、調律師でなければ判断は難しいです。
鍵盤の高さ同様、深さも次第に変化します。極端な凸凹を発見したら調律師にこう依頼しましょう。

こんなときの一言。
「鍵盤の深さ(鍵盤あがき)を調整してください」
定規を当てて深さをチェック。隣の白鍵を基準に上面をなぞって深いか浅いかを判断します。
白鍵の底ざらいで“深さの凸凹”を再度チェック。指先は微妙な段差を感じ取ってくれます。
沈めた状態で黒鍵の先端がおよそ2mm見えていれば良し。(本当はもっと緻密に測定します)
鍵盤の高さ同様、深さも1鍵ずつパンチングペーパー(ドーナツ状の紙)を出し入れして調整。

■アフタータッチのチェック ※グランドピアノのみ

いよいよアフタータッチのご紹介となりました。
これはグランドピアノだけに備わる便利な機能。トリル、連打、微弱音が欲しい場面でアップライト以上にデリケートな表現を可能にします。

では実際にアフタータッチを確かめてみましょう。
音を出さないよう鍵盤をゆっくり押し下げて下さい。底に達する1mmほど手前で何かトクンと引っ掛かって抜ける感触がありませんか?
それがアフタータッチになります。意識を指先に集中して下さいね。

アフタータッチの適量については、メーカーや機種の違い、調律師や弾き手の好みもあるので、私も説明に悩むところです。
極端に量が多いと、ドクン!と手ごたえが強いために、なんだか弾き心地もゴツゴツした感じになります。…トクッ…と量が少なすぎるのも、キーボードのようなコシがないタッチになってしまいます。
やはり言葉で表すなら、トクンくらいの上品な反応がベターですね。機会あれば店員に気付かれぬよう店のピアノで確かめましょう(笑)。

もちろんアフタータッチは白鍵も黒鍵も同じ感触であるのが理想的。
全ての鍵盤を均一なトクンに揃えるのも調律師の仕事になります。
この調整は、鍵盤の高さ、深さ、アクションの調整等、調律師が積み重ねた作業の言わば総決算。このような数々の過程を経て、ようやくピアノが工業製品から表現豊かな楽器へと生まれ変わる訳です。

ご自身のピアノのアフタータッチをチェックして、きれいに揃っていたら調律師のメンテナンスとあなたのピアノ管理が順調であるという証!
バラツキがあれば、あなたの演奏もピアノもレベルアップする余地が残っているということ。うちのピアノは…などと諦めてはいけません。

グランドピアノで練習している皆さん、もしアフタータッチが不揃いで、トリルや連打が弾きにくいと感じたならば調律師にこう告げましょう。

こんなときの一言。
「アフタータッチを調整してください」

白鍵アフタータッチの目安。グランドピアノならば少し鍵盤を戻すだけで再度同じ音を出せます。
黒鍵はこんな感じ。そう、実は先に述べた黒鍵深さはアフタータッチの感触で調整するのです。アクションの動作を紹介している動画を発見。0:50からアフタータッチの様子をとらえています。ジャックがローラーから脱進する瞬間が指先に感じるトクンの正体。この反応を88鍵同じように調整するのが技術者の最終目標です。

■エピローグ “非効率な手間”が“品質”と“価値”を高める

美味しいコーヒーの条件にハンドピックという作業が欠かせないのを皆様ご存知でしょうか?
コーヒー豆の焙煎を行う前後に時間をかけて欠点豆を丁寧に取り除くことで淹れたときの味わいが更に洗練されるそうです。焙煎や抽出といった技に目を奪われがちですが、こうした堅実で目立たない地道な仕事が“本当の美味しさ”を陰で支えているんですね。

今まで説明してきたタッチ調整は、まさにハンドピックみたいなもの。
どんなピアノでも鍵盤やアクションの凸凹を丹念に修正してあげれば必ずワンランク上の弾き心地や音を楽しむことが出来ます。手始めに簡単にチェックできる鍵盤の動き&高さから調べてみましょう!

たとえハンドピックしなくてもコーヒーが飲めるように、調整が半端でもピアノの音は出るため、どこか変に感じながらも理由が分からぬまま弾きにくいタッチで練習しているユーザーは少なくないはずです。
最近はメーカーも楽器店も、このような基本作業を“手間”として省く傾向に…。これも商業主義と価格競争がもたらす弊害でしょうね。
まさしく仏作って魂入れずという諺がピッタリだと私は思います。
効率性ばかりが重視される世の中ですが、意味のある手間にこそ本質的なモノの価値は存在するのではないでしょうか。
お世話になっているマスターの仕事ぶりを見学。1粒1粒を選り分ける作業は見るからに大変!
“均質”に美しく焼き上がったコーヒー豆。丁寧にムラを排除することで品質がUPするのはピアノもコーヒー豆も一緒ですね!